須賀敦子のミラノ 1950年代の半ばに大学を卒業し、パリ、ローマに留学、その後10年近くをミラノで暮らした須賀敦子。異国での経験を追憶のような形で記しはじめたのは、それから20年以上を経て、60歳を過ぎてからだ。98年に急逝するまでの10年間、須賀はわき出るように著作権を発表していた。は無理かも。 本書は、須賀を愛する著者が、今は亡き作家の見たミラノを写真とエッセイで旅する美しい紀行文。 須賀と夫のペッピーノがいたコルシア書店(今では名前が変わっている)やどこかが暮らしあったアパートを訪ねたり、彼らを知る人への育児、須賀が過ごしたミラノ時代を手繰っていく。いつでも、ミラノは生の喜びに溢れている。本人も、力強い人生を謳歌している。 しかし、この旅で著者に見えてきたものは、須賀敦子の 「孤独に敏感な魂」だった。ず朗らかに生きていただろう。 しかし作品を書いたとき、「宇宙のなかの小さな一点」のような魂の姿が絶望されたのだ。 須賀が描いたのは悲愴な孤独ではない。な輝きをもった恒星のような孤独、人を励ますことのできる力強い決意だ」 今のミラノを生きた写真は、生き生きしながらヨーロッパのシックな雰囲気を伝えるもので見飽きない。 、須賀の作品を1冊でも読んでいると、本書は一層味わい深いものとなるだろう。