李立峯 編 ふるまいよしこ 訳 大久保健 訳、白水社、2023/12、418p
「指揮組織なき運動」の実態を解き明かす
2019年に香港で起きた大規模な抗議活動は、14年の雨傘運動をもしのぐ歴史的事件となった。「逃亡犯条例」改定反対から始まったデモはどのように組織され、なぜ街全体を覆うほど大きなうねりとなったのか。本書は、デモ参加者たちへのインタビューと研究者の分析によって、「指揮組織なき運動」が拡大していくメカニズムと、雨傘運動から続く香港社会の意識変容を多様な視点から解き明かそうとする試みである。
本書の構成も運動の多様性を反映したものになっていて、デモ参加者を1.政党・社会運動組織の関係者、2.激烈な街頭抗争に関わった「前線」のメンバー、3.コミュニティー活動家、4.専門資格者、5.年長者、6.中高生、7.在外支援者、8.報道関係者の8つのカテゴリーに分け、それぞれについて「三人の証言+分析」というスタイルをとっている。
過激化する活動を支持し陰に陽に支えたのは、和(平和的)、理(理性的)、非(非暴力)を信奉する市民たちだった。彼らのあいだで職域・学校域や社会的役割の枠組みを越えたさまざまな活動による横の連携が生まれ、相互に影響し合うなかで運動が展開されていった様子が手に取るようにわかる。
納入までに3週間ほどかかります。