須田剋太展

￥1,500

• 著者 須田　剋太／画
• 出版社 三越
• 刊行年 1985
• サイズ 29ｃｍ
• 解説 混沌の画家 ― 須田剋太
  京都市立芸術大学学長 梅原猛
  
  須田剋太氏ほど自己の芸術論について雄弁に語る芸術家はない。氏は自己の芸術論とい
  うより、自己の哲学について、あるいは道元のごとく、あるいは西田幾多郎のごとく、氏
  自身の自らつくりだした実に多くの言葉で膨大な概念大系を語るのである。氏の言葉の中
  天空から舞い降りてくるようなきらきら光った言葉があるが、全体として言語でも
  って表現する氏の思想なるものは、哲学者の私が読んでもあまりに難解である。
  言葉においてあまりにも雄弁に独自の哲学を語る須田氏は、自己の専門とする絵画にお
  いては、あまりにも頑強に自己の内面の本質について沈黙しているように私には思われる。
  もとより氏の絵画には、ちょうど棟方志功に見られるような純粋なる生命の輝きのような
  ものがある。それを氏は「縄文記号」といっているようであるが、氏の作品の中には、い
  たるところに「縄文記号」が表われている。あるいは古寺に鎮座する古仏の中に、あるい
  は町に遊ぶ少女の中に、あるいは路傍に咲く花の中に、氏自ら「縄文記号」と呼ぶ生々し
  い生命のいささか抽象的表現をみて、その感動を画面にたたきつけるのである。今の日本
  において氏ほどこのような純粋な感動を直接画面にたたきつける芸術家はいない。
  私は須田剋太の中に棟方志功や、あるいはマチスのような純粋な生命の画家を見るので
  ある。しかし、氏の芸術には、もうひとつの面があるような気がしてならない。
  
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