石川栄世, 遠城寺宗知 編、文光堂、1989.6、288p、27cm
序
現代において最も恐れられ, また生命の脅威となっているのは,悪性腫瘍である. そしてその勢いはここ当分続きそうである.
軟部腫瘍という言葉が普通に使われるようになったのは, 1953年に Stout の
tTumors ofhe Soft Tissues が AFIP より出版されてからである. 今日では最早
聞き馴れた言葉となったが,上皮性腫瘍と比べてなぜかまだ一般になじみがうすい。 これは, 悪性
軟部腫瘍の発現頻度が通常の癌よりはるかに低く, その組識像も多彩且つ複雑で診断を下だすこと自体がしばしば困難なためにもよろう
軟部腫瘍に関する書は,本邦はもちろん、 外国においても数少ない. 読者の多
くは Enzin-ger & Weiss の Soft Tissue Tumors (1983年初版)を参考にするが,
800 頁をこえる大作であるため, 手軽に利用できない。
私どもは、かねてから本邦の症例を中心に, 自らの手によって軟部腫瘍のカ
ラー・アトラスをつくりたいという夢をもっていた.たまたま文光堂社長浅井宏祐氏が非常な熱意を
もって企画に協力して下さり, 私どもの夢もようやく実現することになった.
編集部の基本方針を石川栄世と遠城寺宗知が討議して大綱をきめ,執筆は臨床
面を篠原典夫氏に,また病理面を軟部腫瘍について共に勉強してきた同僚たちに分担してもらった.
カラー写真のほとんどは各執筆者の所属機関で扱った症例よりとったもので
あるが,部のものは consultation のため送られてきたものを含み, 許可を得て
本他機関のものを利用させて頂いた.書の完結まで, 二年の歳月を要した。 その間における浅井宏祐氏の協力と理解,また
嵩恭子・村井美由起両女史の行き届いた協力にたいし厚く謝意を表する.
本書が軟部腫瘍に関心をもつ病理医,外科医,整形外科医,とくに若い医師たち
に幾分なりとも役立てば,この上ない喜びである.
平成元年5月
初版 ハードカバー 記名 状態:良好