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日本の古本屋メールマガジン第4号 2003.4.24発行



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■ 。.:*゜・☆*゜日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
     。.:*゜・☆*その4・4月24日号・*:.☆.
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◆INDEX◆
1.古本の売り方
2.新東京古書会館落成記念
3.日本の古本屋の新機能について
4. バックナンバーのお知らせ&次号予告
【最後に古書店情報を掲載しています】
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▽上手な本の売り方▽
【はじめて本を売る全ての人のために…】
前回のメールマガジンで予告してしまってから、はたと困りました。
「上手な本の売り方」どころか、よく考えたら、ぼくはお客さんと
して他の本屋に本を売りに行ったことがないのです。
そこで、知り合いの同業者に聞いてみることにしました。

第一声「ばかやろう、そんなことがわかるグレエなら、こちとら
苦労しねえヤ!」
自分が本を売るときの事を聞かれているんだと思ってますな。
本屋は寝ている間もそのことを考えているので、何を言われても、
自分の在庫が頭に浮かびます。 それでも何人かからは面白い話を
教えていただきました。

けれど、それは面白いだけで、あんまり役に立ちそうにない話でした。
というのは、もともと本好きで、それがこうじて本屋になった人は、
 既存の本屋の買い方に満足できなかったので、自分で売ろうとい
うひとです。
つまり、『上手な本の売り方』ができなかった人なので、参考に
なりません。
また、買い手がつかないような本を経験の浅い書店に売りに行ったら
思わぬ高値で買ってくれて嬉しかったのだけれども、後で市場で
顔を合わせるようになって、どうか俺の顔を忘れていてくれ、
と祈ったというような話も……

結局わかったのは、本を売るテクニックは大きく分けて2種類ある
ということです。
まずは、「本屋を選ぶ」ということ、それから手持ちの本をいかに
その本屋にプレゼンテーションするかということです。
本屋選びのほうは次回にまわして、今日はどういうときに本屋が
喜んで買取するかということを、初心に戻り、当店での実体験に
基づいてお話しましょう。

まず、ひと揃いのものはなるべく全部まとめて処分していただく
ようにしてください。
続きものが全部あるのと、一部がかけているものとでは、まったく
価値が違います。
全集などには、希少な巻と余る巻とがあるので、バラでは非常に
扱いにくいのです。
20巻の全集で揃いなら10万円、1冊欠本で3万円などということ
もあります。

それから、同じような傾向の本をまとめて売ると、高く評価します。
同じ著者の本を何冊かまとめて持っていくのも効果的です。
その中には平凡な本もあると思いますが、同じ著者の貴重な本と
一緒であれば、評価します。在庫過剰になりがちな本でも同傾向の
本がたくさんあれば、品揃えの「厚み」として利用できるからです。

持ってこられる際に、電話帳やノートも一緒にしてごみ袋にでたら
めに放り込んで来る方がいますが、それはよくありません。表紙が
折れ曲がったりして、本が大切にされていないことが、ぼくらの心
を傷つけます。拭いたり磨いたりする必要はありませんが、天地を
そろえるぐらいはしてほしいものです。

一度に処分する量ですが、20冊ぐらいから300冊ぐらいまでが適当
でしょう。
それ以上の場合には、相談してからのほうがいいと思います。
場合によってはお宅まで出張してくれる店もあります。

小説やエッセイなど「軽い」内容のものは、早く売ったほうが得です。
目安としては、1年以内です。2年ぐらいすると文庫化されることが
あります。
そうなったら元の単行本は無価値になります。
ビジネス書などでは有効期限半年というものもあります。
ベストセラーものは古くなると誰もほしがりません。
定期的に処分されることをお勧めします。

内容のしっかりした、次の時代に残したくなるような本は古くなって
もあまり価値が変わりません。
希少価値が出てむしろ高くなるものもあります。
専門書・美術書・趣味の本などで、その事柄について本格的に研究
した方の蔵書なら、たいていは価値があります。

蔵書を整理される場合に、まず雑誌などを捨ててから相談される方
がよくあります。
残っているものは、世界美術全集や百科事典など作りの立派なもの
だったりします。
これはダメです。事典や全集などは新版が出ている場合がほとんど
だからです。

作りの立派な本に価値があるとは限りません。とくに戦前のものの
場合、子供の本や趣味の雑誌などに希少価値があります。捨てて
しまいそうなささいな物に、むしろそんな物だからこそ、その時代
だけの息吹を伝える何かがあるのです。
長年ためた蔵書を整理する際には、ご自分で判断される前に、まず
古本屋に相談してください。まったく無価値と思っていた品物に
プロが興味を示すので、驚かれることと思います。
日本の古本屋のステッカーのある本屋(全古書連加盟店)ならば、
ほとんどの場合ご相談にのることができます。

次回は「上手な本の売り方、本屋選び編」です。
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*.:*゜*・゜☆新古書会館落成記念イベント☆*.:*゜*・゜

いよいよ2003年7月、現在、建築中の新古書会館がオープン
いたします!
今まではなかったような、お客様へのサービス、即売展の充実等を
目指します。
 
なお、この新古書会館の落成を記念いたしまして、皆様に楽しんで
いただける数々のイベントを計画中!より一層、古書の世界を身近
に感じて下さい。

予定されているイベント
その1・ 出演:ホワイトマン 「古本ラヂヲ@古書会館」
その2・ 出演:永江 朗他  「古本屋の作り方」(仮称)
その3・ 出演:ズズキコージ 「Tシャツ工房&トークショー」

また、イベントの他にも「本」に関する展示会も企画中。こちらも
お楽しみに!
さらに、この「本」の世界を楽しむ為の本も出版予定!企画、立案は
もちろん古本屋です。古本屋でなければこのような「本」は出来なか
ったのではないでしょうか?

【古本カタログ】:2003年6月下旬発売予定。予価2000円

もちろん詳しい内容は、随時このメールマガジンでもお知らせして
いきます!
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■日本の古本屋新機能☆コンパクトガイド■
サーバーの増強も無事に終了しました。皆様にはご迷惑、ご不便を
おかけしたかと思いますが、現在は快調に動いているのではないかと
思っています。
さて、今回はサーバー増強以外のちょっとした変更をご紹介します!

まずは【和書検索の完全一致検索】です。

今までは、『前方一致検索』および『部分一致検索』のみだった和書の
基本検索機能に、『完全一致検索』も追加しました。
この機能『日本』など、部分検索や前方検索で多くの書籍が検索されて
しまう場合に使うと、とても便利。
また、古書検索の結果の下に再検索用の検索窓をつけました。
この両機能によって、今までの不便が多少解消されたのではないかと
思っています。

さて、つぎは会員登録の変更点のご案内です。
今までお問い合わせの多かった、新規会員登録でのミドルネームの項目
がなくなりました。また、氏名のよみの項目を追加いたしましたので、
情報変更の際にご記入下さい。
なお、今まで郵便番号と電話番号の間のハイフンは不要でしたが、
現在は必要になっています。
会員情報変更の際に、ハイフンを入れていただくようにメッセージが
出る場合があります。ご協力よろしくお願いいたします。


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日本の古本屋メールマガジン第3号 2003.3.18発行


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 。.:*゜・☆*゜日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
     。.:*゜・☆*その3・3月18日号・*:.☆.
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◆INDEX◆
1.日本の古本屋サーバー増強のお知らせ。
2.古本の探し方【極意編】
3. バックナンバーのお知らせ&次号予告
【最後に古書店情報を掲載しています】
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ずいぶんと温かくなってきました。春です。つらい花粉の季節…という
ことには目をつぶり、新たな環境への一歩を踏み出す季節です。
というわけで、日本の古本屋もサーバーを増強します。
様々な方からご意見・苦言をいただいており、こちらでも作業を急いで
いたのですが、機材の手配等の都合もあり、最終的に3月26日の実施と
なりました。
特に目新しい機能等はありませんが、ともかくサーバーが遅くて我慢
出来ない、ということはなくなりますのでご期待下さい。
なお、作業中はサーバーを停止いたしますので、ご理解いただきたく
お願い申し上げます。

 ☆ サーバー停止予定 ☆
2003年3月26日 午前9時~3月27日 午前9時(24時間)

*対応が完了次第再開する予定です。
*対応が延長される可能性もございます。ご了承下さい。
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古本の探し方【極意編】
まず、のっけから言い訳をするようで申し訳ありませんが、古本屋
で本を探すのはとても難しいことです。

なぜなら、現在流通している本(絶版でない本)だけでも60万種
類、雑誌や絶版書、そして微妙な違いのある異本類を含めれば、そ
の10倍から100倍ぐらいの商品アイテム数があります。
まさに、九牛の一毛、海岸に落ちた一粒の砂を探すようなものです。

しかし、実際には探求本はもう少し限られていると考えられます。
と、言うのは、それなりの理由があって探されているはずだからです。
たとえば、その分野のことがらについてはもっとも基本的な(あるい
は
唯一の)著作であるとか、その著者の一番こだわった作品であるとか、
ある時代のことを語るには欠かせない一冊であるとかです。

理由の側から探していけば、その本のことをよく知っている本屋が
きっといるでしょう。
そういう本屋を見つけられれば、本探しはなかば成功したようなも
のです。
専門家でいつも特定の分野の本を求めているなら、自分にとって
役立つ本屋をすでに知ってるでしょう。
(知らなければ、すぐ先輩に聞いてください)
けれども、確立された学問ではなく、各分野にまたがるような本を
いろいろと探している人はどうしたらよいのでしょうか。

結論から言えば、懇意の古本屋を持つことが最善だと思います。
というのは、本を探すのはあまり商売にならないけれど、親しい
お客様のためなら、やる可能性があるからです。
高い本なら在庫していそうな専門店を知っているでしょうし、
安い本なら、気に留めておいてそのうち見つけてくれるかもしれま
せん。
どちらにしても、あまり利益は出そうにない割には手間がかかりま
すが、技術としてはできないことはないわけです。

古本屋のほとんどは、この商売を愛してやっているので、応援して
くれる人、品揃えをほめてくれる人には親切にします。
相手が商人であることをわかって接すれば、懇意の店を持つことは、
とても簡単です。

あとは、要するに古本屋に頼むわけですが、依頼するほうにも
マナーがあって、これを守らないと、お店の側もまじめに対応
してくれません。

まず、電話ではなく、お店に直接足を運んで依頼すること。
他では手に入らない品物を用意することによって、どこにでもある
普通の商品も一緒に買っていってほしいと思っています。
そのためには、お店に来てもらわなくてはなりません。
商店にとっては来店してくれるお客様が一番大切です。
来店しないお客様に目玉商品を買われてしまうことは、かえって
マイナスだとお店では考えるかもしれません。

次に、題名や著者名が正確であること。本屋は扱っている本を全部
読んでいるわけではないので、内容から探せと言われても困ります。
書誌情報については前回のメルマガで説明した方法で調べてください。
ついでに、その本が絶版かどうか(定価で手に入るかどうか)も
調べておきましょう。
古本屋が本を探すときには、足と知識と人脈を駆使して文字通り
「探す」 わけですから、定価の範囲内で安く仕上げるのはほとんど
無理です。

3番めは、希望価格を示すことです。お客様に値段を提示しろと
言うのは少し難しいかもしれませんが、わからなければ、率直に
「いくらで手に入るか」と聞いてしまうのがいいと思います。
「相場」で手に入れたいと思っているのか、それとも「安く」
手に入れたいと思っているのかが、本屋にとって重要な点です。
相場で買うということであれば、市場にその本が出品された時に
入札してくることができます。
(市場については、メルマガ創刊号を参照のこと)。

以上、古本屋側の心理についても、いくらか述べましたが、これは、
一古書店主である私の考えですので、もしかしたら、自分は違うぞ
という本屋さんが多数あるかもしれません。
melma@kosho.or.jpまで、ご意見をいただけたら今後の参考に
いたしますので、よろしくお願いいたします。

ー文責 馬角斉ー

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日本の古本屋メールマガジン第2号 2003.2.21発行

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 。.:*゜・☆*゜日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
     。.:*゜・☆*その2・2月21日号・*:.☆.
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◆INDEX◆
1.速報!新東京古書会館【その1】
2.必ず見つかる??書籍検索【基本編】
【最後に古書店情報を掲載しています】
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もう暦の上では春ですが、まだまだ寒い日が続いていますね。
うっかりこたつでうとうとして風邪を引いてしまった!
なんてことにならないよう、皆様ご注意下さい。

ところで、みなさんは東京古書会館をご存じですか?
明大通りを下り、駿河台下に着く、少し手前の道を左に入ったとこ
ろに東京古書会館はあります。
創刊号の時にお話しした『市場』を開催したり、業者以外の人が古
書を買うことが出来る『即売展』をおこなっていました。
現在は改築工事中で、古書即売展は日本教育会館、市場は別の場所
で行っていますが、いよいよ新会館が6月に完成し、7月~8月頃
から、即売展や市場も再び東京古書会館に戻ります。

以前の建物では即売展の会場が二階にありましたが、今回は地下に
会場が移動します。
また二階には、情報交流コーナーを設け、古書に関する情報などの、
各種展示を予定しています。

情報コーナーのアイデアやリクエストがございましたら、
melma@kosho.ne.jpにお寄せ下さい。
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【本の探し方・基本編】
前回のメールマガジンのあと、「本の探し方」についての質問を受
けました。
また、うちのお店にも、「これこれの本ありませんか」と尋ねてく
るお客様がよくあります。
そこで、今回と次回の2回にわたって「本の探し方」について考え
てみることにしました。今回は「基本編」です。

「本を探す」と一口に言っても、2種類の場合があります。

ひとつは、題名や著者がわかっている場合です。その場合はまず、
本のサーチエンジン「Books.or.jp」(http://www.books.or.jp/)
などで、版元(出版社)に在庫があるかどうか調べましょう。
これでヒットするものはとりあえず定価で買うことができます。
「日本の古本屋」(http://www.kosho.or.jp/)で調べてみましょう。
送料込みでも、定価より安く手に入りそうなら、注文する価値が
あります。
新刊で欲しい場合や、お急ぎの場合は、なじみの新刊書店に注文
するか、bk1(http://www.bk1.co.jp/)や
紀伊國屋書店BookWeb(http://bookweb.kinokuniya.co.jp/)
などのオンライン書店を利用してみるのもいいでしょう。

版元に在庫がない場合はどうしたらいいでしょうか。
この場合も、まずは日本の古本屋(http://www.kosho.or.jp/)
で検索してみます。
何冊もヒットするようでしたら、近所の古書店の店頭で見つかるか
もしれません。古書店の棚を探してみて下さい。
見つかれば、送料分お得です。
予想外に他の本と出会える可能性もあります。
ただし、日本の古本屋で近所の店がヒットしたからといって、いき
なりそのお店に行くと空振りする事があります。
お店ではなく倉庫などに在庫をおいている場合も多いからです。
一度、電話やメールで連絡をしてから、お店に行くのが確実でしょう。

日本の古本屋でヒットしない場合には「探求書コーナー」
(http://www.kosho.or.jp/servlet/tankyu.ksT001)に登録できます。
その分野を取り扱っている古書店に、探求書メールが配信され、
在庫があれば古書店から連絡がきます。

専門書や貴重な本の場合、日本の古本屋の「古書店検索」
(http://www.kosho.or.jp/servlet/shopkensaku.ksS001)で、
そのジャンルの書籍を取り扱っているお店を調べることができます。
古書店によっては、データベースに登録していない在庫を持ってい
ることもあるので、その分野に力のある書店に問い合わせてみると
いいでしょう。
問い合わせ方ですが、探求書リストをいきなり、FAXやメールで
送りつけても、まじめに取り組んでもらえない可能性が大です。
同じリストを他の古書店にも送ったと思われがちだからです。
古書店からしてみれば、市場(創刊号参照)でやっと落札してきた
商品を「他で手に入れたからいらない」と言われてしまったらたま
りません。
できれば、実際に店まで足を運んで、それが無理でもなんらかの方
法でその本に対する情熱をわかってもらえば、古書店も真剣に取り
組んでくれると思います。
古書店の在庫はたいがい一点限りです。だからなるべくその本を最
も欲しがっている人に届けたいと思っています。
まして、貴重な本であれば、古本屋といえどめったに手にできませ
ん。
それなりのドラマを経て仕入れたはずです。
定期的に足を運んでくれるお客様を失望させないために、そういう
本を売らないで取っておくというようなこともします。
そうそう、古書組合に探求書の問い合わせをしてくる方もいらっし
ゃいますが、あまり成果を得ることは出来ません。
お客様へのインフォメーションは業務の対象外となっているため、
組合ではみなさんがご満足いただけるほどのご返答を返せません。

さて、もう一つの場合の話に入りましょう。
題名や著者があいまいな場合です。
そのときはまず書誌情報を集めることから始めます。
内容から問い合わせを受けても、古書店は在庫をすべて読んでいる
わけではありませんから、十分にお答えできないことがあります。
ただ漠然と「こんな内容の本がないかな」というケースでは、国立
国会図書館
(http://www.ndl.go.jp/)が使えます。
件名からたどっていけば、未知の本を見つけることができます。

大体の著者なり題名なりがある程度わかっている場合は、前述の
オンライン書店が役に立ちます。bk1は、書誌情報が充実して
います。戦前の書籍も調べることができます。
BookWebは本の写真(業界用語で書影といいます)が充実
していて店頭で本を探す助けになります。
書評や内容紹介も載っていて、かなり楽しめます。

ところで、「日本の古本屋」などのデータベースで検索する時に、
一字でも違っていると検索されない場合があります。
書誌情報を確かめてから、検索することをお勧めします。
それと、旧字や歴史的仮名遣いもご注意ください。
「澁澤龍彦」は「渋沢竜彦」ではヒットしません。
「日本の古本屋」は複数の書店のデータが混在するサイトですの
で、旧字に対する考え方も書店によってまちまちです。
漢字だけでなく、題名と副題の区切り方などの書式が微妙に違う
こともありますので、いろいろ試してみてください。

それでもわからないことは、古書店に聞いてみるといいかもしれま
せん。
図書館などのデータとは異なる、微妙な点を驚くほどよく知ってい
ることがあります。著者は忘れたけれど装丁者だけは覚えている、
とか。
古本屋にとって貴重なことは、ごく些細な事柄である場合が多いの
で、図書館や書評誌などとは、また違った視点からの話が聞けると
思います。

では、次回は古本屋のホンネを明かす「極意編」をお送りします。

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古本屋のエッセー 架空の寺山修司全集

架空の寺山修司全集

玉英堂書店 斎藤 良太

 今日もいつものように市場へ行く。何を見たらいいのか、どこに注目したらいいのかわからず気持ちだけが焦っていた。そんな半年ほど前に、私が最もお世話になっている大先輩の何気ない一言がこの作家との出会いであった。『寺山の全集は作れないだろうなぁ…』本当に他愛もない話の中の一言であり、人によっては聞き流してしまうかもしれない。しかし私にとっては印象に残る言葉であった。これだけありとあらゆる作家の全集が刊行されている現在でも、寺山の全集は作れないという。いや、作ってほしくないとでも言いたげであったように思う。

『寺山修司』詩人、歌人、劇作家。青森県の生まれ。高校時代に俳句雑誌「牧羊神」を創刊、その後「チェホフ祭」で「短歌研究」新人賞受賞、歌壇は模倣問題で騒然となる。19歳のときにネフローゼを患い絶対安静の日々がつづく。生死をさまよう姿を見て、これほどまでに才能のある作家の作品が、世の中から忘れ去られてしまうのを懸念した中井英夫の尽力により、21歳のとき第一作品集「われに五月を」が出版される。3年間に及ぶ闘病生活を克服した寺山の創作意欲は堰を切ったようにジャンルをこえてあふれだし、ラジオ・テレビ・映画といったマス・メディアへと広がっていく。31歳のときには横尾忠則らと演劇実験室「天井桟敷」を設立、その方向性は街一帯を使って繰り広げる「市街劇」へと移り、前衛芸術活動を展開する。

 これほどまで多岐にわたって才能を発揮した作家は数少ない。寺山の作品は内容はもちろん、カバーの装幀・挿絵・字体・判型そして時には紙の色にまでこだわり、すべてを網羅してはじめて一つの作品となっている。どれかひとつが欠けていたら、それは寺山の作品ではなくなってしまうであろう。大先輩の一言、何が言いたかったのかわかったような気がした。また、特徴的なものに直筆原稿がある。他の作家に比べ極端に書き直しが少ない。

時には雑誌の切抜きを貼ったり、色鉛筆を使っているものもある。単なる下書き的な意味合いではなく、原稿も一つの作品として考えていたように感じられる。

幸運なことに、第一歌集「空には本」を手にすることができた。しかも両親宛の署名入である。この作品は寺山が退院する直前に刊行されたもので、病床での寺山の写真が扉になっている。どのような気持ちでこの本を両親に捧げたのであろうか。

『時には母のない子のように だまって海を見つめていたい』今日も店には色紙が飾ってある。寺山の詩は本当に心が和むものが多い。それに対して評論は理解しがたく読み進むのすら困難である。しかしふと気づくと、理解しようとまた読み返している。いつのまにか「寺山ワールド」に足を踏み入れているのかもしれない。寺山は47歳でこの世を去るとき、「私が死んでも墓は建ててほしくない。私の墓は私の言葉であれば充分」と書き残したという。近いうちに必ず訪れてみたい。青森県にある「寺山修司記念館」へ。

東京古書組合発行「古書月報」より転載

禁無断転載

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日本の古本屋メールマガジン創刊号

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 。.:*゜・☆*゜日本の古本屋メールマガジン・*:.☆.:*..*。
       。.:*゜・☆*創 刊 号・*:.☆. 
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◆INDEX◆
1.相場の謎を解く-古書籍の市場-東京古書組合広報部
2.古本屋のエッセー 
【最後に古書店情報を掲載しています】
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日本の古本屋(=全古書連)から、最初のお便りを申し上げます。

皆さんも、そろそろお正月気分も抜けたころと思いますが、
お休み中はいっぱい本を読みましたか。
私のお店では、2日から営業を開始しました。
でもその日は本の買取はなく、3日になって数人が売りに来てくれました。
5日には最初の宅買い(お客さんの家まで本を買い取りに行くこと)をして、
6日には最初の市場に顔を出しました。
初市なのでお茶会に来て行くような着物を着ていったら、
みんなに笑われてしまいました。
(汚れやすいので、ほとんどの人は作業着のようなものを着ています。)

今日は、その「市場」についてお話します。

皆さんは古本に市場があるのをご存知ですか。

本を売りにいらしたお客様が、「古本の値段はどうやって決まるのか」
という質問をされることがあります。
大切に持っていた本の価値をこの本屋はわかってくれるのかと
不安なのかもしれません。
でも、その値段は個々の本屋が勝手に本の価値を判断して
決めているわけではありません。
全古書連加盟の古本屋ならば「相場です」と答えるでしょう。

その「相場」が作られる場所こそ市場です。正しくは「交換会」と言いますが、
全古書連加盟業者だけが参加できるオークションや入札会です。
東京では神田をはじめとして5箇所の常設会場があります。
東京以外にも、ほぼ各県に一つの割合で古書組合があり、
おのおのが市場を主催しています。
特に東京では、週末をのぞく毎日市場が開催され、
全国の業者が活発な取引を行っています。

市場には多くのプロが集って、お客様から仕入れた本を持ち寄り、
またお客様に売りたい品物を手に入れて帰ります。
そうして鑑定眼を鍛え、情報を交換し合っているわけです。
市場があるおかげで、店ではあつかわない分野の本も買い取りできるし、
品揃えしたい分野の本を集めることができます。

たとえば、文学を専門にしている書店が理工書を買い取った場合、
自分の店ではあまり売れないので、市場に持っていきます。
一方、他の書店が出品した文学書を買ってきて店に置きます。
こうして、古書店の、品揃えにおける「専門性」がたもたれ、
買取においては「総合性」が発揮できるわけです。

「市場」は全古書連の活動の中心です。
市場を開催するために全古書連があるとも言えます。
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■古本屋のエッセー■
古書組合内部機関誌「古書月報」に掲載の
玉英堂書店 斎藤良太さんによる『架空の寺山修司全集』と
古書サンエー 山路和広さんによる
『世界で最も偉大なるジャンキーとポルノの帝王の物語』を一挙公開。

若手古書業者による、エッセイ二本立て、お楽しみください。

『架空の寺山修司全集』

『世界で最も偉大なるジャンキーとポルノの帝王の物語』

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