鈴木信太郎 訳、岩波書店、1980年7月、407p、15cm
9刷 帯付 両表紙と背ヤケ無し 帯ヤケ無し(赤入り。帯) 本体三方少ヤケ 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。
ヴァレリーの詩はランボーなどの詩に比べて、知性的すぎるという評価もある。たとえば小林秀雄はヴァレリーの散文には幾度も言及するが、その詩業については一顧だに与えていない感じがする。用いられているイメージもどちらかというと伝統的な題材が多い。しかし、純粋な詩を創作する精神的努力に重きを置き、肉体と意識との濃密な関わりをとらえた、詩人ヴァレリーを高く評価する人も多い。加藤周一などはヴァレリーの「若きパルク」を絶賛する。
原語ではない訳本だが、鈴木信太郎の手になるこの詩集は私の偏愛の書である。特に「若きパルク」の冒頭「泣くは誰、彼処に、一陣の風にはあらで、この黎明ただひとり、究極の金剛石と共に在る時…」のフレーズが私の意識の中で鳴り始めると、私の感性も覚醒しはじめる。「註」も詳細であり、巻末の佐藤正影によるヴァレリー紹介文も簡にして要を得た秀逸なものである。