ドナルド・リチー 著 ; 山本喜久男 訳、フィルムアート社、1990年11月、397p、22cm
9刷 カバー付 カバーヤケ無 本体三方ヤケ無し 線引き無し書き込み無し 保存状態良好です。
「僕は豆腐屋だから豆腐しか作らない」
小津の余りも有名な言である。小津は、こうも言っている。
「ひとには同じように見えても、僕自身はひとつひとつに新しいものを表現し、新しい興味で作品に取りかかっているのです」
『彼(小津)が監督した53本の劇映画』は、『強調点は・・変化し』つつも、娘の結婚や親の死など『家族の別離』を機とする、『日本の家庭・・の崩壊』を描いた、これが著者リチーの見解である。そこには無論『時代』も織り込まれているが、一貫するのは『世代間の関係』である。リチーは、『日本的』とされる『もののあわれ』をキーに、『小津固有のもの』に焦点を当て、「脚本執筆」「撮影」「編集」の創作過程を詳細に辿って、小津映画の『特質』に迫る。小津の映画は、『題材の世俗性』故に、彼の死後我が国では忘れられた存在と化し、その再評価は、西欧からの逆輸入によりもたらされた。これにはリチーも大いに与っている。そのリチーの豊かな知識に裏打ちされた、西欧人ならではの『日本的』な発見を基底とする、小津映画の解剖は、また違った角度からの鑑賞法を教えてくれる。