ガルシア=マルケス 他著 ; 木村栄一 他訳、サンリオ、1987年1月、357p、15cm
初版 カバー付 カバーヤケ無し 本体三方少ヤケ 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。
アルフォンソ・レイエス「アランダ司令官の手」は、切り落とされた手が意志を持って動き出す物語、結末に思わずニヤリ。
オクタビオ・パスの「波と暮らして」は海で波と出会った主人公が波を連れて帰ろうとする顛末。
ファン・ルルフォ「犬が鳴いていないか」は漱石の「夢十夜」を思い出す、重いムードの短篇。
オラシオ・キローガ「羽根枕」は寝苦しくなりそうな怪談。
ガルシア=マルケスは「エバは猫の中」「イシチドリの夜」の2篇収録。どちらも死に関するひんやりとした手触りの短篇。
個人的に最も好きだったのが、ホセ・エミリオ・パチェーコ「遊園地」。これはほんとうに面白い!まるでミルハウザーの小説にでてきそうな、摩訶不思議な遊園地を、断片的な文章を重ねて表現しているのですが、皮肉のスパイスがたっぷりきいて、こってり濃厚、なのに文章は都会的、ぜんぜん暑苦しくないのです。ものすごく好みだったので、他の小説も探してみたいと思いました。少しでも翻訳されていることを祈りつつ。
全18篇、こういう短篇集は、終盤に収録されているものは読まずに放置されがち、なのですが、この文庫の後ろ2作、アドルフォ・ビオイ=カサーレス「パウリーナの思い出に」と、フリオ・コルタサル「追い求める男」は捨て置いてはいけません。特に「追い求める男」は、破滅型の天才ジャズマン、ジョニーの人物像と、彼の伝記を書く主人公の対比が秀逸、寂しいムードのストーリーですが、もはや筋書きはどうでも良いのです、読んでいる時間が幸せです。