島尾敏雄 著、潮出版社、昭和62年7月、179p、20cm
初版 函 帯付 函裏面上部ヤケあり 函両面少シミ 帯ヤケ無し 本体天と小口ウスク極少点シミ 本体三方ヤケ無し 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。
巻末に奥様の島尾ミホさんの話が載っていて、この本は「震洋の横穴」「震洋発進」「震洋隊幻想」「石垣島事件補遺」の四篇に、フィリピン・マニラ湾口のコレヒドール島の震洋隊基地跡をたずねた後に更に一篇を書き加えて完結の予定になっていたが、コレヒドール島へ向かう直前になって島尾が健康を損ねてしまい、延期となって時期の到来を待つうちに、突然島尾が黄泉の国へ一人で旅立ってしまったと。
特攻隊の中で空の神風や海の回天、海龍等については出版物も多く、戦後もなお人々の記憶に残ったのにくらべて、震洋のことはほとんど知られていないので、その隊員であった著者は震洋隊について書き残したいと、国内はもとより国外までの基地跡をたずね歩く予定を立てた。しかし、健康状態との兼ね合いから予定を縮小せざるを得ず、最後に残ったのがコレヒドール島だったという。というのも、コレヒドール島は元々著者の部隊が進出するはずで、そこが死に場所となるはずだったからである。
結局、震洋は戦果らしいものはほとんど残せず、その任務を終えてしまったが、隊員にはお国の為にと訓練に励んだその時間は強烈な記憶として残り、現地には基地跡の横穴として残された。