ウェイン・C.ブース 著 ; 米本弘一 ほか訳、書肆風の薔薇、1991年2月、571p、22cm
1刷 カバー付 カバー両表紙シミあり カバーヤケ無 本体三方ヤケ無し 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。
本書のキモを一言で示すならば、「小説は語りなのだ」 という一点に尽きます。
小説を 「示す小説」 と 「語る小説」 とに分類し、
そして近代の作家たちは 「語る」 から「示す」 へ進化しようと努力を重ねてきた、と指摘します。
「語る小説」は 古い口承話芸の残り香をひきずるできそこないだ、というわけです。
たとえばサルトルの「神の視点への批判」 などが例として挙げられます。
しかし、とブースは言います。
小説のナラティブから 「語り性」を脱色することなどできはしない。
小説とは本質的に「語り」なのだ。
小説とは 作者と読者とのコミュニケーションの媒体なのだ。
小説 = コミュニケーション 、というわけです。
この基本的な視座にのっとって様々な分析がなされますが、
根本は 「語り手の声」 の分析です。
本書は1961年に書かれた記号論の論考なのだ、という点は、
読む際に考慮に入れたほうが良さそうです。
「小説 = 作者と読者のコミュニケーション」 という命題の目指すところは、つまるところ、
小説の所有権を作者から読者の側にとりもどそう、という当時の思想の流行と一致します。