オクタビオ・パス 著 ; 宮川淳, 柳瀬尚紀 訳、書肆風の薔薇 <、1991年10月、132p、20・・・
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われわれの時代の芸術、いや文化を根底から変えてしまったマルセル・デュシャンという大きな謎。それについて何かを考え、語ろうとする人は何をおいてもまず本書を読まねばならない。小さな本ですが、これはそんな絶大な価値を有する書物だと思います。
本書の出版は著者パスがノーベル文学賞を受賞した直後の91年で、それすらすでに20年前ですが、おさめられている2本の論考は68年と73年のもので、邦訳の雑誌への初出はそれぞれ74年と77年とあります。しかし、これはいささかも古い書物ではありません。どのページをとっても、確固たる理論的パースペクティヴと、作者と作品への繊細きわまりない眼差しに支えられた分析の数々はまったくアクチュアリティを失っていないし、たとえば読者は最近のティエリー・ド・デューヴ(マルセル・デュシャン―絵画唯名論をめぐって (叢書・ウニベルシタス)、芸術の名において―デュシャン以後のカント/デュシャンによるカント)の論考を先取りするかのような議論をも発見して驚くでしょう。
パスの巨大な知性は、我々の生きる(末期)近代の文化/芸術状況を大胆に裁断した上で、詩人ならではの胸を突くような美しい警句に乗せて次々と繰り出してきます。