上原和 著、講談社、1992年5月、374p、15cm
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昨今、太子について様々と面白おかしく取りざたされるが、この本は著者の美術史家の観点から、仏像の光背の銘を読んだり、形式を論じたりし、日本書紀や法王帝説などを参照しながら、聖徳太子像に迫っている。また、著者の若き日の戦争体験に照らして、太子の心を理解しようとしている。法隆寺にある開けてはならない伏蔵とは? 著者は太子を敬愛してやまず、法隆寺にて講話を聞き、太子の跡へ旅を重ね、特に瀬戸内海より難波津へと来るときの二上山の姿や四天王寺がどのように見えたかなど興味深い。日の出の難波を海上から見てみたいと思いませんか? 文章は読みやすい。太子関係の本は沢山あるなかで、理性的かつ感性豊かな名著といえる。当時の思想と文化の先端をいく法王大王、颯爽とした俊才知識人かつ深い心の重荷を持った太子像である。聖徳太子についての多角的で歪みの少ない理解が得られると思う。