田中聡 著、青弓社、1996年9月、258p、20cm
1刷 カバー付カバーセ書ピ色アセ カバー両y面ヤケ無し 本体三方ヤケ無し 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。
「健康法と癒し」と銘打っているが、本書の主題は「健康法」の変遷から「身体観」の変遷を切り取って来るというもの。要するに、基本的には「健康法」の歴史をたどりながら、様々な健康法の流行をもたらす背景となっている欲望の根本を、「身体」に対するまなざしの変化から分析したもの。「健康」というと、自分の身体のことであり、身体の感覚が第一の基準であると思いがちであるが、本書を読むと、実際には「理想の身体」の有り様というものは、社会的な価値基準の変遷の中で大きく変化していくものであり、知らず知らずのうちにそうした価値基準を当たり前のように思うところから、様々な「健康グッズ」の流行がもたらされる、という構図が見えてくる。戦前の「国家主義」のもとでの「健康な身体」が、今日の「消費社会」のもとでの「健康な身体」へと移り変わっていく過程が、鮮やかに示されるところはなかなか唸らされる。紹介される健康法のエピソードも面白く、かつ考えさせる、というなかなかの好著。