大竹昭子 文・写真、河出書房新社、2001年9月、142p、21cm
初版 カバー 帯付 カバーヤケ無し 帯ヤケ無し 本体三方ヤケ無し 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。
夫を亡くした翌年訪ねたヴェネツィアは、須賀にとって「なによりもまず私をなぐさめてくれる島だった」という。ヨーロッパは堅牢な石の文化である。しかし水の上に浮かぶヴェネツィアは、石と水が拮抗しあっている場所。「石に信頼を寄せつつも、水を受け入れなくては生きてこられなかった」現実を、須賀は「ヴェネツェアの悲しみ」と表現している。「…ヨーロッパ人の英知に魅了され、それを徹底的に学ぼうとした時期が須賀にはあった。二十代から四十代にかけてそうした時期を過ごし、日本にもどり、ヨーロッパでの体験を距離をもって眺める時間の中から“ヴェネツィアの悲しみ”を感じ取る眼が育まれた」。著者はそこに、「人間たちの悲しみ」に寄りそおうとする須賀の視点を見つけている。
夫との充実した生活やコルシア書店の仲間たちとの交流によって生の動機にあふれていた須賀のミラノ。それに対し、水の上に浮かんだヴェネツィアはかりそめの雰囲気に漂わせる。そして、それは須賀が確かに見つめていたもう1つのイタリアであった。