フェルナン・ブローデル 著 ; 浜名優美 訳、藤原書店、2013年11月、496p、22cm
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出来事、政治、人間と題される第3部から、ようやく普通の歴史書らしくなるが、著者本人はどうも事件史について懐疑的少なくとも両義的な姿勢を示しているように思う。”出来事はちりのような物だ”とこの巻の冒頭で彼は言っている。しかし実際には、この巻は、1550年から1570年のレパントの海戦とその数年後までを扱い、その大半が数年ごとに繰り返される戦争の記述である。この巻で初めて年表が付属してくる。カール5世の弟と息子フェリーペ2世への相続で、ハプスブルグ帝国はスペインとオーストリアに分割された。1559年スペインはフランスからイタリアの支配権を奪い取る。そしてオスマントルコとの対立が激しくなって行く。幾多の戦いが描かれるが、当時の航海は時間がかかるし、寄港地で嵐のため1ヶ月停泊しているうちに、伝染病で兵士が大量死するなど相当に大変だ。しかも、スペインとトルコが単純に対立するだけでなく、北イタリア諸都市やフランスがトルコに味方したり、スペイン内部の反乱などが複雑に絡み合って行く。そしてレパントの海戦を迎えるのだが、この戦自体は2−3ページで終わってしまう。事ここに至るまでは詳細に描写されるのだが、ここは軽くすます所にブローデルの引き気味の姿勢を感じる。事件としては派手だが、歴史的には重要でないと彼は記す。