ドリス・レッシング 著 ; 山崎勉, 酒井格 訳、晶文社、2007年11月、227p、20cm
<新装版.> 1刷 カバー付 カバーヤケ無し 帯ヤケ無し 本体三方ヤケ無し 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好の美本です。
アフリカに住む白人夫婦。その妻メアリが使用人であるアフリカの男に撲殺された。メアリの生い立ちから殺されるまでを描く。
殺した男は絞首刑になることを承知で殺した。救いのない物語だ。レッシングは登場人物の誰にも情をかけない。肩入れをしない。この厳しく乾いた視線は、彼女の作品全部に共通している。ネコのエッセイを書いたときも、同じ態度でネコたちを見つめた。それは、無情、非情かというと正反対だ。救いのない暗いヒトたちの描写と、アフリカの大地の圧倒的な力を感じさせる描写が続く。読了したとき、アフリカの人たち、アフリカの大地、白人と呼ばれる文明の開けた土地から入ってきた人たち、すべてへの愛が、作品全体を覆っていることを知る。文明が進んでいるから上位に立つのが当然だ、と考える白人たちの鈍感さと無知に対する哀れみが読者の胸に芽生える。