冨原眞弓 著、青土社、2009年5月、460p、21cm
初版 カバー 帯付 カバーヤケ無し 帯ヤケ無し 本体三方ヤケ無 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。
分厚い本です。たいへんな力作です。特に後半、ぐいぐい引き込まれて読みました。トーベ・ヤンソンはムーミンの生みの親であることはもちろん知っていましたが、ムーミン誕生のかなり前から、トーベさんが「ガルム」という名の雑誌に時事的な風刺画を描いていたことは、この本を読んで初めて知りました。トーベさんが「ガルム」に関わったのは1920年代から50年代前半まで。二つの大戦で欧州が揺れていました。ヒットラーやレーニンが権勢を振るっていました。しかし、トーベさんは筆一本で、鋭い批判を込めた軽妙な笑いでヒットラーもレーニンもやりこめました。当時発表された絵が各頁にふんだんに紹介されており、著者の鋭い読み解きが展開されています。検閲の厳しい時代でもありました。そんな時代によくぞこんな絵が描けたものだと、トーベさんの強靭な反骨精神に圧倒されます。
トーベさんの作品を時系列で鑑賞すると同時に、フィンランドの近現代史に触れることができました。フィンランドは陸続きのふたつの大国、ソビエト(ソ連)とドイツの脅威にさらされ続けてきました。苦境を凌いできたフィンランドの外交姿勢に日本も学ぶ点があると考えます。