岩橋邦枝 著、新潮社、2011年9月、215p、20cm
初版 カバー 帯付 カバーヤケ無し 帯ヤケ無し 本体三方ヤケ無し 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。
野上弥生子の作品は『秀吉と利休』『真知子』しか読んでいない私ですが、
99歳の天寿を全うしたこの才女には少なからぬ興味を抱いてきました。
この岩橋邦枝さんの著書は弥生子の初めての本格的な評伝ということですが
他のレビュアーの方も書かれているように、弥生子の美点ばかりでなく
そのプライドの高さやナルシスティックな一面にも触れていてまことに興味深いです。
九州の裕福な家に生まれて当時の女性としては最高の教育を受け、家庭教師だった夫野上豊一郎の縁で
漱石に処女作を批評してもらうなど、経済面も人脈にもきわめて恵まれていた弥生子は
たゆまぬ努力を重ねて大作家の道を歩みますが、その反面、彼女にひとかたならぬ恩恵を及ぼした豊一郎の
出自を軽蔑したり(豊一郎の方も浮気をするなど模範的な良人ではなかったようですが)、
日記のなかで大いに周囲の人々を批判し、教育ママぶりを発揮し(三人の息子はいずれも大学教授〉、
エリート主義で肩書にこだわったことなど一筋縄ではいかない人柄がうかがえて面白い。