白山 眞理【著】、吉川弘文館、2014年10月、500,5p、19cm(B6)
初版 カバー 帯付 カバーヤケ無し 本体三方ヤケ無し 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好の美本です。
日本における写真を含むプロパガンダの歴史は、早川タダノリ氏が、『「愛国」の技法-神国日本の愛のかたち』(青弓社刊)や『神国日本のトンデモ決戦生活』(合同出版刊)で、つぶさに、皮肉タップリに実証した通りである。そのプロパガンダの内幕はどうだったのか。本書は、ドイツから帰国した名取洋之助(1910-1962)により、1933年頃から日本で始まった「報道写真」(グラフ誌などでまとまったメッセージを伝える組み写真)の普及活動を、多くの著名カメラマンと軍部との関わりを中心に、丹念に辿った労作である。写真が掲載された当時の雑誌を豊富に引用しながら、芸術志向あるいは商業志向のカメラマンが、ほとんど例外なく、戦争の真実を伝えるどころか戦争賛美の路線に陥っていく様子が描かれる。日本カメラ博物館所属という著者の立場をフルに活用し、逐一原資料を調査することで得られた成果といえる。本書に登場するカメラマンの華麗さに驚く。名取洋之助以外に、木村伊兵衛、土門拳など戦後も活躍した人達が綺羅星のごとく登場する。
戦後、カメラマンの戦争責任は曖昧なままにされてきた。軍部に協力する以外にはカメラマンとして生きるすべがなかったことは事実にせよ、この問題を本格的に扱ったのは、本書がその最初らしいことが驚きである。戦時中に活躍したこれらの人達は、リアリズム写真などで戦後もそれぞれが大活躍した。岩波写真文庫(1950-1958)にはこれらのカメラマンの作品も多い。リアリズム写真は、土門拳の『ヒロシマ』(1958)や『筑豊のこどもたち』(1960)として結実した。