東京新聞、1979、24x25cm
あいさつ
明治期の洋画摂取には、水彩画を介して展開する局面があります。
これは、幕末明治初期、 近代洋画摂取の最初の先達となったチャー
ルズ・ワーグマンが練達の水彩画家であったこと,さらに水絵具に
よる日本画の永い伝統があったためで、やがて水彩画全盛時代が訪
れ、浅井忠のような世界的水準の水彩画家を生むに至りました。
その後、こうした伝統をもつ日本の水彩画の, いっそうの近代化を
推し進めることになったのが, 中西利雄の出現でありました。 東京
美術学校西洋画科に学んだ中西利雄は,当初より水彩によって, 油
彩に劣らない近代的な表現の実現をめざし, 昭和9年の帝展で、水
彩によるはじめての特選を受賞し, 11年には,同志とともに,唯一
の水彩画家として、新制作派協会を結成し, 斬新な近代主義運動の
旗手として活躍することになりました。
モダニズム
中西利雄は鋭敏な都会的感覚をもって、流暢な描線と明快な色調を
駆使し, 近代性あふれる新鮮な水彩画をうみだしましたが,昭和23
年,48歳で世を去って, 30年を迎えることになりました。 その業績
は永久に消えることはありませんが,その全貌を集大成し,われわ
れの記憶を新たにすべき時機かと思われます。
こうした意図のもとに中西利雄展を企画いたし、ご遺族をはじめ、
所蔵家,愛好家の方々のご賛同とご協力を得まして,大回顧展開催
の運びになりました。
ご出品いただきました各位のご厚意を感謝申し上げますとともに
この展覧会が改めて中西利雄の偉大さをしのぶ縁となることを念頭
する次第であります。
昭和54年3月
東京新聞
小田急グランドギャラリーで開催
(少ヤケ)