村上至孝 訳、岩波書店、昭和18年12月、298p、15cm
初版 両表紙少ヤケ 背ヤケ 本体天点シミ 小口と地少ヤケ 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。
イトルが、「わが生涯の著作と思い出」になっているとおり、この本の内容は、私はいかにして『ローマ帝国衰亡史』の著者となったのか、というものだ。
この本によれば、ギボンは学究の人であるが、学校教育の影響はあまり受けておらず、自分の知的探究心の赴くままに独習をしていくタイプの人であったようだ。父親の勧めもあって数学もやってみたが、少年の頃から愛好していたギリシャ・ラテン文学からどうしても離れられず、いつしか歴史書を書いてみたいと考えるようになる。
それほど波乱万丈な出来事も起こらないが、出会う教師たちの人物描写は時に痛烈で面白いし(とくにオックスフォードの教師陣)、家族友人たちに対する温かい気持ちや率直な批評、そして自分の人生についてが明晰に、時には諧謔交じりに描かれていてとにかく読ませる。明晰で向日性で……と、「啓蒙」に生きる人たちは、なんて闊達だったんだろう、と思う。(現代人からみれば、割り切りが良すぎるなあ、というところもあるが)
フランクリンや福沢諭吉の自伝と相通じる爽快さがあって楽しい。