国立西洋美術館学芸課 訳・編、読売新聞社、1980、1冊 (頁付なし)、24cm
ごあいさつ
ジャン=オノレ・フラゴナール (1732-1806年) は, 18世紀
のフランス絵画界において, ワトー, シャルダン, ブーシェと
並び称された大画家であります。 彼は,ロココ芸術の特色であ
る享楽的で装飾的な作品を描く一方, 自由闊達な精神で生命感
あふれる人物画や、詩情豊かな風景画を描いて, 当時醸成され
つつあった市民文化を反映する業績を残すなど、 その活動の幅
広さは当時のフランス画家の中でも群を抜いております。
また、光と影の微妙なもつれ合いの美しさを通じて感情を表
現した点では, 19世紀印象派の先駆者といえるでしょう。 しか
し、彼の全業績を示す総合的な展覧会は, 1921年にパリで組織
されたのがこれまで唯一の機会で、 その後は殆ど実現できない
ものと見做されていました。
私たち主催者は,多年にわたる周到な準備と精力的な海外折
衝の結果, ワシントンとロンドンのナショナル・ギャラリー、
ルーヴル美術館, メトロポリタン美術館, エルミタージュ美術
館等, 世界各国の公私の著名美術館や個人コレクターの御好意
が得られ、日本で初めてフラゴナールの本格的な展覧会を実現
する運びとなりました。 世界でも60年ぶりになるフラゴナール
芸術の系統的展観は、わが国の美術愛好家はもとより, 欧米の
美術関係者にも大きな反響を呼ぶことでしょう。
ここに貴重な作品を快く御出品くださった美術館, 個人コレ
クターをはじめ, 本展を後援された外務省, 文化庁,在日フラ
ンス大使館の関係各位に対し, 深甚な謝意を表します。
1980年 5月
国立西洋美術館
京 都 市
読売新聞大阪本社
読売テレビ放送
薄ヤケ