ギャラリー新居編、ギャラリー新居、1997-7、24×26cm
ギャラリー新居 20周年によせて
椿本照夫
ウィークデイの或る日 突然会社に聞き馴れた声で電話をかけて来た。
新居紘一君である。 “今日は一寸御相談したいことがありますので”と
云うので待っていたら、割合真面目な顔でやって来た。 独立したいと
云うのが話の中味で、これは迂闊に返事は出来ないと思ったが、この
ときまでに18年間 梅田画廊で社員として充分経験を積んできたと云う
実績と彼の人柄のよさをかねてから評価して来た私だったので2つの
条件を出した。
○特定のスポンサーをつくらずにあくまでも自分でやりぬくこと。
○今まで育てていただいた梅田画廊の土井憲治さんにグッドウィルを
もって送っていただくこと。
其のつもりでおりますと答えたのが、 約20年前のことである。彼の人生
での転機はこうして生れた。御存知の様に梅田画廊は広い範囲の作家の
作品をあつかっている画廊だから彼とても其の流れを汲んで来たのが
当然だとは云えるものの、新居君自身は相当個性的な作家の好きな人で
営業的には必ずしも合致しないとは云うものの、“これは仲々いいんだ
けどなぁ”と2人で苦笑し乍ら1枚の絵を見ていると云う様なことも
少くはなかった。
それでもこの20年の間にリンチャドウィックのブロンズとか、 クー
バッハーヴィルムゼン-ティームの石の彫刻などをとり上げて吾々をおど
ろかせてもいる。
私にはえらそうに絵画を含むいろいろな芸術を論ずる資格はさらさら
ないが、 新居君との出逢いは充分私の人生に潤いをあたえてくれたことは
事実であり、 彼のこれからの活躍を確信をもって語れることは嬉しい
と思う。
椿本興業株式会社 会長
状態:良好