ワルター・クリヴィツキー[著] ; 根岸隆夫訳、みすず書房、1987年4月、272, 5p, 図版 ・・・
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スターリンの病理的宇宙がロシアと世界を捲きこんでいた時代、1941年2月10日、
ワシントンのホテルの一室で一人の人物が謎の死を遂げた。ワルター・クリヴィツキー、
かつての西ヨーロッパにおけるソヴィエト諜報機関長である。
彼は一冊の回想録を遺した。それが本書である。
ここには、ヒトラーのドイツ、内戦のスペインに対してスターリンの執った政策のすべてが、
その執行吏によって語られている。また〈粛清〉という名の20世紀の魔女狩り裁判の実態
が、ソヴィエト体制内部の現場から記録されている。スターリンのテロルの実行者、ヤゴダ
とエジョフの言葉が再現され、彼らの犠牲となった古参ボリシェヴィキ、赤軍の将軍たちの
悲劇的な最後の姿が戦慄をもって描かれている。これは人間の経験した最も過酷な政治
世界のインサイド・ストーリーである。
1939年の刊行以後、本書のたどった運命もまた著者のそれと同様に数奇であった。
本書は一時その信憑性を疑われ、著者の実在も否定されていた。しかし今では、
スターリンに対する最初の告発書のひとつとして、また現代史の第一級のドキュメント
として評価が定まり、1991年には遂にロシア語版が日の目を見た。
半世紀をかけて、クリヴィツキーを欧米各地に追い求めてきた訳者による解説がその
経緯を物語るだろう。
[第1版初版1962年12月25日発行]
[第2版初版1987年3月10日発行]