大場秀章 著、八坂書房、2005年8月、270p 図版8p、20cm
1刷 カバー 帯付 カバーヤケ無し オビヤケ無誌」本体三方ヤケ無し 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。
著名な植物学者である著者が、さまざまな雑誌に書いた記事をまとめたもの.そのため一貫したテーマがある本ではないが、ひとつひとつの記事が肩のこらない楽しい、それでいて内容の濃いエッセーのようになっている.花、植物通のすすめ、秘境の花・旅の花、花・人・出会いの四部から成っている.花や照葉樹林やの植物を自然からの贈り物ととらえ、そのお返しを考えた時代の人々のほうが、現代人よりもエコシステムに則した暮らしをしていた、というのがこの本全体を通した著者の視点であろう.1万年前のネアンデルタール人がめでたヤグルマギク、バラの皇后といわれたナポレオンの妃ジョセフィーヌ、日本の花見の歴史、世界最大の花ラフレッシア、など興味深い話が多い.ときに著者はスギ・ヒノキばかりが増えた日本の森林を大いに慨嘆する.最後の部は著者がふれあった植物学者の小伝になっているが、一般の読者にはあまりなじみがない.ジョセフィーヌが育てル・ドウーテが描いたバラの絵が8枚、植物の色を紹介するための植物写真が9葉、カラーで載っている.これらはとても美しい.他の植物写真もすべてカラーであれば、この本はもっと素晴らしいものになったにちがいない.植物のモノクロ写真ほどつまらないものはない.