昭63、113p、24x25cm
あいさつ
前田寛治は明治29年 (1896) 鳥取に生まれ、 昭和5年(1930)33歳の
若さで世を去りました。 しかし, その短い生涯における活動と残さ
れた数多くの作品は, 今なお光彩を放ち, 日本近代洋画に大きな足
跡をしるしました。
東京美術学校を卒業した翌大正11年, 前田寛治は渡仏します。 滞
欧は約2年半におよび, エコール・ド・パリの雰囲気のなかで,西
欧絵画の伝統と新たな展開をまのあたりにし自らの絵画様式を確立
します。 ことにクールベのリアリズムに傾倒し, 一貫して写実表現
を追求することになります。
帰国後,滞欧時代から親交があった仲間たち, 里見勝蔵, 小島善
太郎, 木下孝則, 佐伯祐三と 『1930年協会』 を結成します。 フォー
ビスムを標榜した 『1930年協会』 は, 新しい絵画の興隆として当時
の美術界に波紋を投げかけました。
この時期のわが国の洋画界は,激しく揺れ動き,さまざまな様式
が錯綜したひとつの転換期でもありました。 こうした時代に前田寛
治は、独自の写実理論を掲げ意識的に時代を作っていこうとしてい
たのです。
この展覧会では初期から晩年まで, 油彩画,素描等約80点を陳列
し,前田寛治の芸術を回顧しようとするものであります。
本展の開催にあたり, 貴重な作品を快くご出品いただきました所
蔵者の方々, 美術館をはじめとする関係各機関,および, ご協力い
ただきました関係者の方々にたいし深く感謝の意を表します。
昭和63年4月
渋谷区立松濤美術館
渋谷松濤美術館で開催、ほぼ良好