Marie de Rabutir-Chantal 著 ; 井上究一郎 訳、岩波書店、昭和18年5月、・・・
初版 両表紙シィ于ヤケ 背ヤケ 本体三方少経年ヤケ 線引き無し書き込み無し保存状態並本です。
セヴィニェ侯爵夫人マリー・ド・ラビュタン=シャンタルは、ルイ14世時代のフランス女性。彼女が身内や友人にあてた手紙は生前から名文として知られたが、1500通に余る書簡の中でも、公表を予想しなかった娘にあてたプライヴェートな便りの方が、かえって今日では文学的な価値を認められている。
本書はその娘にあてた手紙を中心に、娘が中年の貴族に嫁ぐ前後の33通を選ぶ。わが子との別離を悲しむ母親の愛情の行方をたどる、という物語のような構成になっている。
訳者は続編を編むことを予定していたが、それはならなかった。現在でも大学書林から語学教育用に書簡抄が出版されているだけ、という事情を考えると本書の価値は大きい。教養が深く、宮廷のゴシップにも興味しんしんという性格があいまって、読みごたえがある。