毎日新聞社 美術出版デザインセンター、1974、24×25cm
このたび、現代彫刻の巨匠一 「ヘンリー・ムアによるヘンリー・
ムア展」を開催することになりました。
本展は作家自身によって,各時期を典型的に代表する彫刻と版
画作品が選ばれ、偉大な軌跡の過去から現在、さらに未来へ
の展望をふまえた点で、まことに意義深い回顧展であります。
ヘンリー・ムアは,近代イギリス彫刻にルネッサンスをもたら
した巨匠であるのみでなく、すべての研究家が賞賛しているよ
うに、世界的にもっとも高く評価されている作家であります。
二十世紀の近代彫刻は, 考古学的な資料として埃にまみれてい
たものが彫刻的感動をもって迎えられ, それが二十世紀の近代
彫刻に新鮮な性格を与えたことは、マティス、ピカソにはじま
っております。 ヘンリー・ムアはメキシコのプレコロンビア期
のもっている力強い生命力とその形態に惹かれ, 「母と子」 (1922
年),「横たわっている女」 (1926年)を制作しております。 ヘ
ンリー・ムアはいう、「わたしの彫刻のなかで, わたしが不断
に使っているのは、二つの特殊なモティーフ, 主題である。 そ
れは横たわっている人体の考えと母と子の考えである。この二
つのうち母と子の方が、わたしがとりつかれている基本的なモ
ティーフであろう」。
・ムアは,そのはじめから,この二つのモティーフを
彫刻とし、現在にいたるまで、この二つのモティーフを自己の
彫刻造形についての考えの展開に従って,驚嘆すべき豊かさと
偉大さのなかで次々とわれわれの前に示しています。 単純で偉
大,純粋で強力, 生命力があって抽象的, と賞賛される理由で
あります。 ムアの作品は、 以上の二つのモティーフに限定され
ないことはいうまでもありません。
本展は83点の彫刻と版画72点を展観いたします。
単純で偉大,純粋で強力, 生命力あふれる芸術のすべてを日本
展のために提供された厚い配慮に対して, 日本の美術愛好家に
かわって心から感謝いたします。
また本展のために,ご協力を賜わった駐日英国大使館, ブリテ
ィッシュ・カウンシル,ウィルデンシュタイン財団および外務
省, 文化庁に対して併せて謝意を捧げます。
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薄ヤケ グラシン紙包装にてお届け致します。