東山時代に於ける一縉紳の生活 室町時代に生きた公家、三条西実隆の六十年に及ぶ日記を元に、当時の貴族社会の私生活、廷臣としての日常を描き、さらにはその東山時代の相に迫ろうとした論文。名調子である。著者はもともと西洋史を専門とした歴史家らしいが、すぐれた学識は日本史を分析しても一家をなすとみえる。 実隆が致仕し、一風流人として、当時最高の連歌師であった宗祇との交流を描く箇所など、特に面白い。古今集の講義など秘伝であったらしく、講義中は「魚味を食することに差し支えはないけれど、房事は二十四時を隔て」などと決まりがあったという。 <筑摩叢書 ; 92> 一縉紳(一シンシン)