山中由里子・山田仁史 編、勉誠出版、2019年11月、368p、A5判
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「驚異」と「怪異」に共通する「異」なるものへの視線は、自己と他者、自己と宇宙の境界認識によって形作られるものであり、自然の中での人間の立ち位置を映し出す鏡でもある。
その「驚異」と「怪異」の表象を、ユーラシア大陸の東西の伝承・史料・民族資料・美術品に探り、「自然」と「超自然」の境界領域、「この世」と「あの世」の心理的・物理的距離感、境界に立ち現れる身体・音・モノなどについて、総勢25名の豪華執筆者が学際的に考察する。
目次
口絵/関連年表
序章―自然界と想像界のあわいにある驚異と怪異
Ⅰ 境―自然と超自然のはざま
自然と超自然の境界論
中国古代・中世の鬼神と自然観―「自然の怪」をめぐる社会史
怪異が生じる場―天地と怪異
百科事典と自然の分類―西洋中世を中心に
怪物の形而上学
Ⅱ 場―異界との接点
平安京と異界―怪異と驚異の出会う場所〈まち〉
驚異の場としての「聖パトリックの煉獄」
怪物たちの棲むところ―中世ヨーロッパの地図に描かれた怪物とその発生過程
妖怪としての動物
イスラーム美術における天の表象―想像界と科学の狭間の造形
歴史的パレスチナという場とジン憑き
Ⅲ 体―身体と異界
妖怪画に描かれた身体―目の妖怪を中心に
平昌五輪に現れた人面鳥の正体は―『山海経』の異形と中華のキワ
魔女の身体、怪物の身体
中東世界の百科全書に描かれる異形の種族
Ⅳ 音―聞こえてくる異界
西洋音楽史における「異界」表現―試論的考察
カランコロン考―怪談の擬音と近代化
「耳」「声」「霊」―無意識的記憶と魂の連鎖について
釜鳴と鳴釜神事―常ならざる音の受容史
死者の「声」を「聞く」ということ―聴覚メディアとしての口寄せ巫女
Ⅴ 物―異界の物的証拠
不思議なモノの収蔵地としての寺社
寺院に伝わる怪異なモノ―仏教民俗学の視座
民間信仰を売る―トルコの邪視除け護符ナザル・ボンジュウ
異界としてのミュージアム
終章―驚異・怪異の人類史的基礎
展覧会紹介「驚異と怪異―想像界の生きものたち」