杉本達夫 著、東方書店、2004年、320p、A5判
抗日戦争期「中華全国文藝界抗敵協会」とその中心にあった作家・老舎の活動を検証。本書は中国の抗日戦期、国民党支配地区を中心に結成された文芸界の統一戦線組織「中華全国文芸界抗敵協会」(略称「文協」)、および、その組織の中心に位置して、文協に最大の貢献をした作家老舎の活動について、抗日戦期文学運動全体の見取り図のなかで、具体的事実に即して探求したものであり、国民党、共産党という政治勢力が濃い影を落とす組織の中にあって、無党派の老舎がいかなる思想のもとに、いかなる行動によって、組織の要となり、抗戦文藝に貢献しえたかを、明らかにすべく試みている。本書で取上げた諸テーマは、中国においても日本においても、取上げられることきわめて乏しく、本書の作業は、日中戦期の中国文学研究の領域を広げたといえるであろう。
構成
第1部 文協と文協における老舎の役割
第1章 文協の成立/第2章 文協発足時の諸文書について/第3章 文協の分会/第4章 抗日戦期の作家生活保障運動/第5章 文協の財政と老舎/第6章 ある日の魯迅記念会
第2部 日中戦期の老舎の軌跡
第1章 老舎と抗戦劇/第2章 『桃李春風』と一九四三年の老舎/第3章 老舎と抗日戦争Ⅰ/第4章 老舎と抗日戦争Ⅱ/第5章 老舎の長編詩『剣北篇』のこと/第6章 老舎の西北旅行-『剣北篇』にこめられた無言の叫び-
第7章 抗日戦期の老舎と胡絜青夫人
後記
老舎、文協 関連年表