フェルディナンド・ツェラー、1890
8vo, 320pp, original cloth binding, decorative title cover and spine, all edges red, gilt in letter, 4 colored engraving, binding loosend
本書はヴィーンの出版人であったフェルディナンド・ツェーラー(Ferdinand Zoehrer:1844-1901?)により当時の青少年向けに発行されたオーストリア・ハンガリー帝国の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に関する図版入り書籍です。ツェラーは経歴としてこれ以外にもオーストリアにまつわる伝説や物語をはじめ、青少年向けの愛国的な書籍シリーズを発行していました。
オーストリア・ハンガリー帝国の国制では、オーストリア政府は皇帝に対して、ハンガリー政府はハンガリー国王に対してそれぞれ直接責任を負っていました。ハプスブルク家の当主であるフランツ・ヨーゼフ1世(フェレンツ・ヨージェフ1世)が、皇帝とハンガリー国王を兼任することとで、アウスグライヒ以降国家の統一性を保証する不可欠な存在でとなっていました。
本書はそうした背景を踏まえて、読者対象である青年層にフランツ・ヨーゼフ1世の役割と意義を示そうとした、政治教育の目的をもって発行された書籍と思われます。