早川 弘一 (著)、南江堂、(1990/12/1)、323p、26cm
序
●早川弘一
不整脈は内科に限らず,各診療科でもしばしば遭遇する。 また不整脈は各年
齢層にみられるが, 加齢と共に出現頻度が高くなることも知られ, 高齢化社会
を迎えている現在では不整脈は Common Disease そのものといえる。
この序文を書いているのは1990年の紅葉の時期であるが,この時期の不整
脈についての話題はいろいろある。 たとえば,呼吸や体動といった生体情報を
巧みに利用した生理的ペースメーカーの普及は徐脈患者に大きな恩恵を与えて
いる。 植込み型除細動器も臨床に応用され米国ではすでに1万人以上がこの治
療を受けているといわれ,わが国でも厳重に選択された患者への適用が開始さ
れた。 アブレーションによる頻脈性不整脈の治療も急速に増加している。
方,抗不整脈薬の開発も盛んで、従来の Ia剤や Ib剤のほかに心室性不整脈に
高い効果を有するといわれるIc剤やIII に属する薬剤が近々使用可能な時期
ともなっている。他方, 北米では特に心筋梗塞後の突然死の予防に抗不整脈薬
が有用か否かについての大規模な臨床試験 CAST (The Cardiac Suppression
Trial)が行われたが,ある種のIc剤の使用群では偽薬群よりも死亡率が高い
という予想に反した結果が得られ, 抗不整脈薬の適用や使用法について世界中
で論議や反省が行われているのが現況である. 不整脈の診断については, 加算
心電図によるレートポテンシャルでの心室性不整脈の予知についての研究が広
まっている。
以上のように, 不整脈についての新しい話題を見渡すと, 治療についての急
速な進歩が特に目につくようである. したがって, これらの新しい治療法や技
術を十分ふまえて Common Disease である不整脈を新しい目で見直して一冊
の本にまとめ, 不整脈診療に努力されている多くの医師やコメディカルの方々
のよきテキストに資することはきわめて意義のあることと思われる.
本書で分担執筆をお願いしたのは, 1990 年代における一流の不整脈学の研
究者の方々であり, したがってその内容は誠に新鮮といえる。
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