25歳★緑川亨(立教大学生)、1949年8月30日午前5時25分脱稿、119頁、1冊
緑川亨(1923.11.8~2009.7.20)は、岩波書店第3代社長。●立教大学在学中の小説。背革装のノートの見返しに署名あり。
●「焼け跡にコツコツと槌音が響いていた。と思うまに経木細工のような小屋が次々に並んでいった。駅前には一夜のうちに映画のセットのようなマーケットが出現し、それだけが敗戦後残された唯一の富でもあるかのように安物の商品がうずたかく積まれ、我れがちにと買い漁りはじめた人々で大陸の市のような殷賑を極めた。一夜のうちに生れ変った原色の女たち、復員服の若者、買出しの人々、どこからともあらわれ始めたそうした連中 が徘徊し、ぶつかり、口論し、街々は原始的な野卑な活気が満ちていった。(中略)浮浪児、パンパン、ヤミ屋の群々、そうしたものが入り乱れ、混乱のうづまく巷に、中華料理の看板が並び横文字が書きつらねられ、ジープが警笛を鳴らして走り過ぎ、ジャズと労働歌がラプソディを織りなして、町はいつしか世界のハキダメのような植民地的色彩にいろどられていった」(70ページより)。
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