詩・吉田一穂 絵・初山滋、フレーベル館、69年、1冊
ハードカバー ビニカバ 「二十三、四歳、大正の末期頃、私が研究社の「中学生」と「女学生」に寄稿した短歌や物語りを挿画した初山画伯の筆に触れた。そのガラス・ペンで描いたやうな神経のこまかい、明晰で、しかも豊かな幻想は新しい近代感覚で、清潔だつた。始め私はビアズレーから出た画風かと思つたが、病的な、怪奇的なものもないまま、画伯独自の発展を楽しく見てきた。今も私の壁間に先生の挿絵の原画が一枚掲げてある、五十年近くも。「ルナアルの日記」として後日、日本で有名になつたが、その前に丸善で手に入れたものは、沢山の絵の入った冊子で、私はこれにヒントを得て、「影の猟人」と題した散文詩を書き「中学生に送った。その時の挿絵のすばらしい出来栄えに欲しくなり、編集部からもらつてきたものである。その後、与田準一さんの編纂で「幼年文庫」が出るとき、初山先生と私が組むといふので『ヒバリハソラニ』を書き、始めて彩色の原画を見て驚嘆した。何んといふ光彩の魔術だらうと。一詩句が彼自らの幻想を生み、この世の限界を超える陸離たる次元を創造してゆく。絵をもつて詩を描く、稀有の詩人をこの人に見たのです。単なる童画家などといふ範疇で律すべからざる詩人である。」(コレクター旧蔵のコピーを付す。「定本 吉田一穂全集」小沢書店 平成4年収録の「影の猟人・初山滋」より)少背曲がりあるが良好
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