河田昌之(編), 赤澤真理(編), 大口裕子(編), 伊永陽子(編)、思文閣出版、2024年05月、・・・
◎伊勢物語を題材とする絵画、書跡、工芸などの造形約一五〇点に焦点を当て、表現の多様性や創作の独自性を解説。雅な王朝文化の象徴である伊勢物語絵の受容のあり方に、造形表現の観点から迫る。
◎本編では、伊勢物語を題材とする造形表現の幅広い展開を、各作品を所蔵する美術館・博物館の学芸員を中心とした執筆者約六〇名による解説と、豊富なカラー図版によって明示。
◎伊勢物語絵の専門研究者陣による総説と論考、伊勢物語絵を読み解くにあたってかかせない画題を個別に分析する「モチーフ集」、より広範なテーマを扱う「コラム」を収載。巻末には作品総覧・所蔵館情報などを掲載。
◎伊勢物語をはじめ、物語絵研究をこころざす入門者から専門家まで、必携の一書。
★★★編集からのひとこと★★★
伊勢物語は、古典であるとともに、現代日本にもその物語世界の断片が息づく、たぐいまれな文芸作品です。たとえば京都で「八橋」といえば、「あのお菓子」を想像する人もいるでしょう。「やつはし」は現代でも耳にする機会の多い言葉である一方、「八橋」の向こうには、伊勢物語をふくめ、深遠な世界が広がっています。
それから、「あのカキツバタの絵」を想像する人もいるでしょう。伊勢物語を通じて、絵画や書、工芸品などかずかずの作品が生み出されてきました。つまり、伊勢物語はその発生から現代にいたるまで、創作にあたっての貴重な、いわば「元ネタ」(オリジナル、本歌)として、君臨してきたわけです。
本書で解き明かされるのは、いかに伊勢物語が、多くの造形物を生み出す源泉となったかということ、そしてその「造形表現」の面での広がりを、ビジュアルと本文の双方から、読者にこれでもか! これでもか! とうったえかけるものです。その範囲は実に多様で、あらゆる造形物に伊勢物語世界がしみ込んでいることが、一目瞭然。
「元ネタ」や、モチーフの背後にある世界を知れば、鑑賞の楽しさも倍増すること、うけあいです。
納入までに3週間ほどかかります。