車谷長吉 著、新潮社、2006年5月、170p、20cm
初版 カバー 帯付 カバーヤケ無し 帯背少色アセ 帯リョウメンタケ無し 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。
終戦間際に生を受け、2015年に69歳で世を去った私(わたくし)小説作家・車谷長吉さんの読書遍歴(助けられ感動して来た本)・生き様やその諦観を知れる良書だと思います。
慶応卒業後、作家を夢見、30歳で夢破れて無一文で実家に帰り、頭陀(ずだ)袋一つで京阪神の料理場の下働きとして9年働き、38歳で意を決して再上京し、47歳で三島賞を、53歳の時、『赤目四十八瀧心中未遂』でやっと直木賞を受賞。
決定的な挫折、大失恋、晩婚。車谷さんの読書遍歴とその生き様から、大くの学びを得ました。以下文中より。
・近代日本小説のベストスリーは、1.夏目漱石の『明暗』、2.幸田文の『流れる』、3.深澤七郎の『楢山節考』
・松本清張の伝記小説はもっと高く評価されてもよいのではないか
・山本周五郎の世界は基本的に諦めた辛苦の生活の先に、一筋の光を見るものである。
・松本清張の世界は、才能がありながら、学歴がないが故に、世の底に埋もれて生きざるを得ない人達の恨みと憤りの物語である。つまり、順調に栄達を遂げた人への反権力の文学である。
・司馬遼太郎の書いたものの中では、『坂の上の雲』が最も優れたものであろう。
・作家などというものは一番下等な人種である。文学は本来独学でやるものである。
・小説の醍醐味は短編小説にあると思うている。