櫻井智美・飯山知保・森田憲司・渡辺健哉 編、勉誠出版、2021年6月、322 頁
版元品切れ。
1206年、チンギス・カンの即位により成立した大モンゴル国は、その後継者たちにより、ユーラシア大陸全土へその版図を広げていった。その後、皇位争いに勝利し、国号を「大元」と改めた世祖クビライが1279年に南宋を攻略したことにより、中国史に新たな統一王朝の名を刻むこととなる―元朝である。
中国史における「元朝」とはいかなる存在であったのか―。
冷戦終結に伴う史料環境・研究環境の変化により、長足の進展をなしてきたモンゴル帝国史・元朝史研究の成果を受け、元代の政治・制度、社会・宗教、文化の展開の諸相、国際関係などを多面的に考察。さらには元朝をめぐる学問史を検討することにより、新たな元朝史研究の起点を示す。
目次
カラー口絵……『書史会要』(台湾国家図書館蔵洪武九年刊本)ほか
序言
導論―クビライ登極以前のモンゴル帝国の歴史
元朝皇帝系図
本書所載論考関係年表
元朝皇帝一覧
Ⅰ 元代の政治・制度
元代「四階級制」説のその後―「モンゴル人第一主義」と色目人をめぐって
ジャムチを使う人たち―元朝交通制度の一断面
元代の三都(大都・上都・中都)とその管理
江南の監察官制と元初の推挙システム
【コラム】2本
元末順帝朝の政局―後至元年間バヤン執政期を中心に
Ⅱ 元代の社会・宗教
元代の水運と海運―華北と江南はいかにして結びつけられたか
モンゴル朝における道仏論争について
―『至元辯偽録』に見える禅宗の全真教理解
元版大蔵経の刊行と東アジア
【コラム】2本
回顧されるモンゴル時代―陝西省大荔県拝氏とその祖先顕彰
Ⅲ 伝統文化とその展開
「知」の混一と出版事業
白樸の生涯と文学
「元代文学」を見つめるまなざし
景徳鎮青花瓷器の登場―その生産と流通
Ⅳ 元朝をめぐる国際関係
『朴通事』から広がる世界
日元間の戦争と交易
日元間の僧侶の往来規模
モンゴル帝国と北の海の世界
元と南方世界
Ⅴ 研究の進展の中で
書き換えられた世界史教科書―モンゴル=元朝史研究進展の所産
史料の刊行から見た二十世紀末日本の元朝史研究
【コラム】3本