ザヘラ・モハッラミプール 著、名古屋大学出版会、2025年3月、430p、A5判上製
〈東洋芸術〉とは何か——。近代日本において歴史像が刷新されるなかで、「東洋」は拡大・変容していった。ペルシア芸術を焦点として、伊東忠太・黒板勝美ら学術界、美術商や展覧会、メディア・思想などのグローバルな動向を結びつけ、今日の美術史が確立されていく過程を丹念に掘り起こした挑戦作。
序 章
1 日本における「東洋美術史」の形成
2 奈良の美術の起源探究と「西方伝来」
3 欧米と日本におけるペルシア美術の受容
4 本書の意義と構成
第Ⅰ部 サーサーン朝芸術の受容と「東洋芸術」の形成
第1章 美術史・建築史における東西の枠組みとペルシア
1 日本における「東洋美術史」の範囲とペルシアの不在
2 日本における「西洋美術史」とアケメネス朝ペルシア
3 西欧の美術史と建築史における「古代ペルシア」
4 日本の建築史におけるペルシアと伊東忠太の独自の枠組み
第2章 伊東忠太とサーサーン朝の芸術
1 伊東忠太とサーサーン朝ペルシアの建築
2 伊東忠太とサーサーン朝の文様
3 「東洋」の一部としてのペルシア
第3章 明治大正の建築界における「東洋芸術」
1 工科大学建築学科展覧会と「東洋芸術」へのまなざし
2 『東洋芸術資料』(1909~11年)と『文様集成』(1911~16年)
3 「東洋芸術」への注目の背景
第Ⅱ部 まなざしが交差する地点
第4章 1920年代日本の美術商とペルシア美術工芸品展
1 山中商会
2 日仏芸術社
3 忘れられた美術商
4 美術市場から学術界へ
第5章 黒板勝美のペルシア旅行と東京帝室博物館の復興
1 黒板勝美と海外旅行
2 ペルシア旅行の概要
3 サーサーン朝遺跡の見学とその背景
4 西アジアにおける古美術蒐集と啓明会創立十年記念展覧会への出品
5 東京帝室博物館の復興と「東洋」の拡張
第6章 啓明会創立十年記念展覧会にあらわれるペルシア観
1 啓明会の活動とペルシア研究の支援
2 啓明会の創立十年記念展覧会におけるペルシアの芸術
終章
1 本書の総括
2 啓明会の創立十年記念展覧会の余波
注
あとがき
付 表
参考文献
図表一覧
索 引
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