兵庫県教育委員会社会教育・文化財課 編、兵庫県教育委員会、1984.3、28p、26cm
はじめに
1. 調査の経過
兵庫県教育委員会では、 近畿自動車道舞鶴線建設工事に伴い、分布調査の後、 昭和57年度か
ら坪掘りによる遺跡確認調査を実施してきた。 春日町棚原地区での確認調査では、 字山垣の地
点で、 溝状遺構から杭列と共に奈良時代の多量の土器が出土し、その中に円面硯や坏蓋を利用
した転用硯、 および 「春マ」と記された墨書土器も含まれていることが判明した。 これらの出
土遺物より、 役所関係の遺構の存在が予想され、 昭和58年度に全面調査を実施した。
調査の結果、 堀を周囲にめぐらした奈良時代の建物址が検出された。 調査面積は、1,400 ㎡²
であるが、調査が道路建設予定地内に限られていたため、側道西側部分については不明で、遺
構の全貌を明らかにすることは出来なかった。 しかし、 出土した21点の木簡の中に 「里長」の
文字がみられることから、 山垣遺跡が当時行政の末端組織である里に関連した役所の機能をも
った施設であることは間違いなく、全国でも初めての調査例と思われる。役所的な機能も持ち
ながら、 曲物などの日常生活用具や槌の子、 杵、 鋤等の農耕具を含む 500点にものぼる木製品
が出土するなど特筆すべきものがある。
状態良好です。