芦原由紀夫 著、山海堂、2005年4月、325p、22cm
1刷 カバー 帯付 カバーヤケ無し 帯ヤケ無し 本体三方ヤケ無しし 線引き無し 書き込み無し 保存状態良好です。
現代の東京における、高層建築群、首都高速や鉄道などの交通網、こうしたものが、どのような歴史の上に成り立っているのか、その東京の軌跡を紹介したのが、本書である。若い人にとっては、現在の東京での暮らしの中に埋もれた意外な過去に出会うことができるし、年配の方にとってはなつかしさを感じるものだろう。
明治元年とともに東京がスタートしたとしたとして、今年で137年になる。その間、関東大震災と太平洋戦争によって瓦解に埋もれた。残ったものもあれば、失われたものもある。たとえ残ったとしても、時代の波によって取り壊されたものも多い。そうした過去に埋もれたものに出会うことで、現在という時間の厚みを感じることが出来るかもしれない。
最初の章は、東京の都市計画と道路計画について書かれたものである。明治の人々が、どんな未来を想像して、計画を立てたのか、その計画がどのように時代に翻弄されたのか。時間的なパースペクティブを与えてくれる。例えば環状7号線の完成が昭和2年(1927年)の着工以来、60年後のことだったという事実には、かつて沿道に住んでいた身としては、ちょっと驚いたりもする。
読んでいて、かなり新鮮な感触を受けるのは、鉄道について書かれた章だと思う。鉄道網がどのように発展してきたかというだけではない。JRはかつて国鉄と呼ばれていたが、さらに遡れば、いくつもの民営鉄道会社が国有化された結果だという事が分かる。しかも、必ずしも専用の軌道ではなく、路面電車であったり、山手線がかつては現在の中央線快速から東京駅につながり、上野駅まで「の」の字形の路線立ったりする。都電はバスや地下鉄にとって変わられ、大手私鉄も路線ごとに別個の会社としてスタートしたものだった。しかも、開業当初は鉄道ではなく電気事業がメインだったり、貨物輸送がメインだったりする。
アーカイブはこの他にも、公園や橋梁、同潤会アパートに代表される集合住宅やモダンな建築へと続く。