小松和彦 著、筑摩書房、2012年8月、285p、15cm
8刷 カバー付 カバーヤケ無し 本体三方ヤケ無し 線引き無し書き込み無し 保存状態良好です。
論文の文体なので、なにかをはっきり云うまでに行数がかかるものの、論理的で明解な文章なので、難解さに泣くことなく、むしろ論理立てられた筋道を痛快に感じて読了できると思う。
テクスト論などを使って、民俗学としてどう進むべきか、民俗学の方向を向いた抽象的な章もある。人はなぜものがたるか、人はどう語りを聞くかにまでつながって、深いと思った。
一方で、具体的な事例(採録した昔話や伝説)が豊富で、生々しい「各論」を読んでいるだけでも、おもしろい。
巡礼坂。比丘尼塚。七人塚。琵琶淵。座頭池。
そうした地名の由来を伝える伝説が、どう変容していくかなども踏まえ、民俗学がこれまで無視してきた「悪意」「殺意」を見据えていく。
異人の歓待、異人の虐待、異人の殺害。
山姥。折口の云うマレビトの再考。猿婿入。河童。
類話を豊富に収集したからこそ、云えることだと思う。民俗学の論理的科学的な側面にようやく触れられた気がした。稀に出会う良書と思う。
函欠