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学鐙』の1973年11月から76年3月号まで連載されたジョルジュ・サンド伝だが、著者は新聞記者ながらフランス人研究者に伍した仕事をしており、サンド没後百年式典では日本人としてただ一人名誉委員を務めている。きわめて水準の高い仕事で、かつ文章も緊密で名著と言ってもいい。
　残念ながら日本ではサンドはショパンの恋人として名のみ高く、作品がよく読まれているとは言えない。本国フランスでも、なお評価が定まっているとはいえない。だが貴族でありながら平民意識をもち、共和主義者でありつつさまざまな恋に生きたサンドを知ることは、19世紀フランス文学を知るためには欠かせないだろう。サンド作品としては、やはり『愛の妖精』『彼女と彼』あたりを読んでからこれに臨むといいだろう。