「反芸術アンパン　(ちくま文庫)」の検索結果

3件

１刷　 カバー付　 カバーヤケ無し　本体三方ヤケ無し　線引き無し書き込み無し　保存状態良好です。

芸術家はみな、どこか普遍性だとかを気にしてないフリをしたりうっすら気にしたり本気で信じたりしながら作品を作るのだろうが、結局それが普遍的かどうかは時間が経たないとわからない。この本を読む前まではこの戦後の日本の前衛芸術の在り方というものを自分自身とても古臭く、陰気なものだと思っていた。芸術が本来志向する普遍性などとは程遠いものだと思っていた。
でも読んでみるとアンパン芸術家があまりにぶっ飛んでいて笑ってしまった。常人にはマネできないことのオンパレード。何かを信じるその強さと馬鹿さの乗としては群を抜いている。今は亡き著者の文章が軽快なことも寄与しているだろうが、おそらく、そんな時代の無邪気さ、エネルギーというものを後から回顧して、伝えたかったのだろうと感じた。著者自身の目線は自分が生きた時代を俯瞰し、その時代の作品の短命に納得しつつも、今はもう冷め切って堅くなった鉄を触るような眼差しで、少し切なく、優しく、哀愁の入り混じった文章が謙虚に綴られていた。
きっとこの哀愁は時代を知るものにしかわからないことだろうし、自分のこの時代の芸術への印象があまりに早計であることを恥じた。