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はじめに
新沢千塚の名は考古学界では知らない人はないが,一たび学界を離れると少し形の
し,これまた弥生文化研究の指標となっていて(県報告第10冊), 多くの人たちがこの弥
て北流する曽我川との間に広大な弥生遺跡があって, 奈良県からも調査報告書を出版
変った丘陵としか受取られない現状である。 われわれ考古学徒には,その西方に接し
生遺跡と古墳文化との関係を考えつつある。 そのため橿原考古学研究所では昭和37年
から41年にかけて125基の古墳を調査した。 それまでにも全体の分布調査を進めたが,
前方後円墳中心に小規模の円墳を主とするほぼ600基の古墳を確認した, 表紙裏図示の
外周までとると約800基にのぼるものと見ている。 発掘調査をした125基の内500号 ・126
号古墳では,従来の日本古墳遺物にも例の少ない貴重資料があっただけでなく、他の
古墳の構造 出土資料の考古学的価値についても,学界のひとしく承認するところで
ある。 しかし整理の貧弱なために発掘後十余年を経た今日, ようやく一応のまとま
りをつけることができて,大方の賢覧に供するところまで漕ぎつけることができた。
このことは発掘後,研究所員の諸君によって進められ殊に博物館の伊達次長の指揮
をもって学芸関係の諸君の大きな努力があった。と同時に整理費の不足を補うために、
麹団法人裙野修徳会と茨木基則氏の好意ある数年にわたる援助と,今回由良哲次氏より
与えられた研究費によって一段と整理・研究・出版を促進させていただいたことを
深く感謝をいたす次第である。
この展観にはまだ整理上の不備があるかも知れないと思うので,賢覧の際に御気付
の点については御教示を御願いしたい。
なお126号墳出土品は,昭和39年度に国有に移管したので,今回特に東京国立博物館に出陳を依
頼し,河内の一須賀, 山畑群集墳出土品は大阪府教育委員会・東大阪市教育委員会・東大阪郷土博物
館・東大阪遺跡調査会などのご協力を得たことを記して謝意を表わす次第である。
昭和50年10月1日
奈良県立橿原考古学研究所
附属考古博物館 館長事務取扱末永雅雄
正誤表　少ヤケ