「木村知石編著」の検索結果

2件

序
私の命は作品をつくるためにのみあるので、その一作に私は私の命をかけてきました。それでいて尚現在まで
に快心のものがありません。
美しい文字が書きたい、よい作品をつくりたい、そのために悩み、苦しみ、焦りながら、明け暮れてきました。
納得のゆく作品が出来たときは、後から生まれる愚作の根を無くするために、自ら命を絶ってもよい。誇らし
い作品の印象だけを残して置きたいと考えて来ました。このように考える私が、作品集をつくるためにこれまで
の作品を選ばねばならぬことは苦しいことでした。
しかし作品を繰返し見て選ぶ間に、私の気持が多少変り出しました。
制作時期の範囲を相当拡げましたので、その時々の私の芸術感情の変遷が表われていまして、私は私なりに苦
悩し、或は楽しんだ跡が見えますので、この感情を整理することも、今後の制作に役立つのではないだろうかと
考えました。
この作品集は、私の作品の反省の資にするためで、いたづらに版を残したいとは思いません。得心の出来る作
品が出来たときは、版を新たにして再度お目にかけ得るかと思います。
鈴木史楼先生に、論評の労をとっていただきましたので、そのために作品が見やすくなったことは大きな幸せ
でした。感謝に堪えません。
木村知石
ハードカバー 函欠　状態：良好