文光堂、1987-9、367、27cm
臨時増刊号 (vol.5)
微小癌癌の診断はここまできた一
編集 下里 幸雄*
高安 賢
かなり以前から甲状腺と前立腺は微小癌ないし潜在癌が高頻度に発見される臓器として注目されて
いる。 しかしこの種の微小癌と臨床的に発見される顕性癌との関係は未だ明確にされていない。また
小さな癌が発見されやすい皮膚や口腔粘膜以外にも, 子宮頸部や内膜では“一爬き癌” という微小癌
の存在が知られていた. 乳腺も臨床的に触知される硬結を凍結迅速診断に提出するため, 数mm の癌
が発見されることがまれならずあった。
一方,その他の深部臓器においては症状発現が遅れるために微小癌の存在は剖検時においてまれに
発見されるにすぎなかった。 これらの臓器では,胃癌を筆頭に, 20 数年前から“早期癌の発見” が診
断医の目標ともなり,臨床的にも数多く発見されるようになった。 その多くはかなりの大きさをもつ
ものであるため, 比較的容易に発見され, 5年生存率の大きな改善に役立っている.
この数年間,内視鏡所見の深い読みに加えて,血管造影, CT, 超音波, MRI など画像診断面での著
しい発達がみられ,いくつかの臓器で今まで発見できなかった病変がみつかるようになってきた。こ
れらは臓器ごとに潜在癌, 小型癌, 最小癌, 微小傷などと呼称され、統一を欠いている.
そこで本増刊号では各種主要臓器におけるお小さな痛あるいは微小癌の呼称、その定義と頻度, 2)
発見の方法と画像上の鑑別診断, 3)異型増殖巣あるいは異型性を伴う腺腫との組織学的鑑別点,ある
いは癌と診断する根拠, 組織診断が困難な場合, 今後期待し得るアプローチ, 4) 背景病変, 5) 現在,
癌という臨床診断の可能な病変の大きさ, 6) そのような癌の臓器外進展や転移の頻度, 予後,7) 最
も適切と考えられる治療法, 縮小手術の可否, などについて病理医と臨床医に述べていただくことに
した。 臓器によっては時期尚早の感もするが, 数年後にもう一度このテーマが取り上げられることが
できるようにさらに大きな発展を期待したい。
・国立がんセンター研究所病理部
**国立がんセンター放射線診断部
p106に1ケ所マーカー線引き(画像あり)
ほぼ良好