「竹久夢二 ― 愛とロマンの世界」の検索結果

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あいさつ
竹久夢二―この、 明治末から昭和初めにかけて一世
を風ビした抒情画家・抒情詩人については、もう説明は
不用かもしれません。“うれいを含んだ顔、眼が大きく
つぶらで、 まつ毛が長く、 夢見がちの、 腺病質の、今に
も折れそうなもろい美しさ” の女性は、作者没後40年の
今も大勢の人々の胸の内に生きていますし、折にふれて
“待てど暮せど来ぬ人は……” と 「宵待ち草」 の歌詩を
口ずさむ人も少なくないはずです。
とりわけ最近は “夢二ブーム” の感すらする程で、 特
にその絵画作品に対して、大きな照明があてられていま
す。 「放浪の画家」 「大正の歌麿」 などと当時もてはやさ
れながら、 画壇からはまったく黙殺されていた夢二です
が、今や小さなワクを越えて再評価が下されるべき時か
もしれません。 単に若い女性を対象として、 夢や憧れや
哀愁を描き、歌ったのみではなく、 美人画に託して、 貧
しい人々、世の底辺に生きる人々へ未来の希望と、はげ
ましを与えた大きな立場からの一面を忘れてはならない
でしょう。
昨年は夢二生誕90年であり、 すでにその前年、県立近
代美術館で回顧展が開かれましたが、 今年は三越百貨店
の神戸開店50年ということで、 会場を同店にとり、 今一
度初公開される大作などをそろえ夢二の業績を振り返っ
てみることにしました。 ご鑑賞下さい。
昭和50年 6月
神戸新聞社
薄ヤケ　グラシン紙包装にてお届け致します。