調輝男 著、金芳堂、1990.1、257p、30cm
はじめに
先年、学生ならびに一般病理,神経病理, 神経内科,脳神経外科, その他の研修医の皆さん
を対象とした,臨床と直接結びついた神経病理学のやさしい教科書として「臨床神経病理」を
著しましたが、幸い多くの皆さんに読んでいただき、改訂版も出すことができました。 しかし
ながら、頭では各疾患の神経病理所見を理解し得ても、実際に自分で一枚の標本を顕微鏡下に
見た場合、どこをどのように見たら良いのかわからず、またそれらの標本をどのように作成し
たら良いのかもわからない、という研修医の感想をいただきました。 写真あるいはスライドで
示された典型的な所見をながめてなるほどとわかったような気分になるのと、実際に自分で
微鏡下に所見を探しだすのとでは大きな差があります。 学生実習でもそうですが、神経病理に
研修に来る研修医の最終目的としては,やはり自分で顕微鏡下に標本を観察して病的所見を探
しだし, 診断を下して欲しいものです。さらには, 剖検材料 (脳・脊髄) においては,脳・脊
髄の肉眼的観察と切り出し,また,手術材料 (脳腫瘍) の術中迅速診断, 生検材料 (筋・神経)
の標本作成とその病理組織学的診断なども自分で行ってもらいたいと思います。
このような目的で,実際に神経病理に研修に来る研修医が神経病理の研修内容を理解し, 研
修の実をあげていただくために、このたび, 剖検脳の取り扱い方と標本の観察の仕方, 脳腫瘍
の術中診断の実際, 筋 神経生検の方法とその標本の見方, 脳脊髄液細胞診の見方などを中心
に,著者が日常行っていることをこの教科書にまとめてみました。 前の“臨床神経病理” とあ
わせ,本教科書により、より良い研修の成果をあげ、ひいては,各科の患者さんにその成果を
還元させ, 神経疾患のより良い病態の把握と治療方針の決定に役立たせていただけたら、著者
の本望とするところです。
初版 カバー 蔵書印 カバーと本体セロテープにて固定 少ヤケ