編集: 加藤暎一, 越川昭三、真興交易・医書出版部、1976-2 第3刷、279p、29cm
まえがき
生体内では絶えず複雑な代謝過程が進行しているが,この代謝の場が体液である。 体液
の homeostasis により試験管内では莫大なエネルギーと時間を要する複雑な反応も円滑に
進みうるのである. したがって体液バランスの異常は, 代謝あるいは機能の異常を招来す
るし,また,この逆の関係も成立する。 代謝あるいは機能の異常を取り扱うのが臨床医学
であるから, 体液バランス, とくにその要の水電解質バランスに関する知識はあらゆる医
家に不可欠といえよう。
たとえば欧米ではインターンやレジデントが病院の医療レベルを判断する一つの指標と
して,糖尿病昏睡の救命率を参考にするといわれる. 糖尿病は primary には糖代謝異常で
あろうが, secondary には脂質をはじめ, あらゆる代謝の異常に発展する. しかし昏睡時
には脱水あるいは acidosis がその病態の中心的役割を演じており、水電解質の十分な知識
なくしては治療成績の向上は望むべくもない。
実際この数年間に水電解質バランスに関するおびただしい数の論文が医学の各領域から
発表され,また,この方面の monograph も五指にあまるほど発行された.もはやこの医
学全般ともいうべき広い領域と関連のある水電解質の知識の進歩を単独の著者でカバーす
ることはほとんど不可能になってきた。 欧米でこの領域で広く読まれている Bland の著書
が第3版からは分担執筆に代わったこともこの間の事情を物語るものと思う.
ちょうどこのとき, 日本における 「J.of Applied Physiology」 が目標の 「臨床生理」 を
はじめとして、基礎医学と臨床医学の橋渡しに努力している真興交易(株) の橋内社長より
本書の企画を知らされた。 たしかに分担執筆には, それなりの長所、短所のあることは百
も承知である.しかし執筆陣には現在それぞれの領域の第一線で活躍され try and error
の辛苦を経験しておられる諸先生にお願いしたので, 明快に,しかも科学性を失わず, up-
to-date な知識をもりこんでほしいという編者たちのいささか欲張ったお願いをも十二分
に満たしていただけたものと思っている.
その他
ハードカバー 記名 薄ヤケ